遺産分割をすすめたい

遺産分割をすすめたい

遺産分割の方法

遺産分割の方法には、大きく分けて、協議による分割(協議分割)、調停による分割(調停分割)、審判による分割(審判分割)があります。

協議による分割

協議による分割は、共同相続人の裁判外における合意によって遺産分割を行うことをいいます。協議分割の場合は、共同相続人は、遺産である個々の財産について自由に分割の合意をすることができます。法定相続分や遺言による分割方法の指定とは異なる内容での分割も可能ですし、遺産分割の前提となる付随問題についてもあわせて解決が可能となる場合もあります。

調停による分割

調停による分割は、裁判所の調停手続によって遺産分割を行うことをいいます。調停というのは、裁判官と有識者2名の調停委員で構成される調停委員会が間に入り、当事者双方の言い分を聞いて、調停委員から具体的な解決策を提示すること等により、紛争解決を図る手続です。調停も共同相続人の合意をベースにする手続きとなりますので、話し合いがまとまらなければ、調停は不成立となり、審判に移行することになります。

審判による分割

審判による分割は、共同相続人間に協議が整わない場合に、裁判所が遺産分割の方法を決定することをいいます。この場合は当事者間に協議がまとまらなくとも、裁判所は、当事者双方の主張と証拠を踏まえて結論を下すことになります。

遺産分割の進め方

遺言書の確認

まずは遺言書の有無を確認します。自筆証書遺言は被相続人の自宅や貸金庫等に保管されている場合のほかに、法務局で保管されている場合もあります。また、公正証書遺言については、公証役場で遺言検索システムにより調べることができます。

相続人の確認

遺産分割を行う前提として、誰が相続人になるのか調査する必要があります。誰が相続人であるかは、まずは被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得することで確認しますが、養子縁組等により、相続人の確認作業自体が複雑になることもままあります。

もし相続人の中に行方不明の者がいる場合は、可能な限り所在調査を行います。それでもなお相続人の行方が分からない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることが検討できます。不在者財産管理人とは、行方不明の相続人の財産を管理する者のことをいい、裁判所の許可を得れば、遺産分割協議に参加することができます。
また、行方不明の者が、長期にわたって連絡が取れていないなど生存の可能性がない場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告が確定すると、その相続人が法律上死亡したものとみなされます。ただし、失踪宣告の確定により、かえって相続を巡る法律関係が複雑になることもあるので、失踪宣告を申し立てるか否かには慎重な考慮が必要となります。

相続財産の調査

被相続人が有していた財産を確認します。不動産、預貯金、保険、投資信託、社債、ゴルフ会員権などのプラスの財産が遺産分割の対象となりますが、借金などのマイナスの財産も確認しておく必要があります。マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合には、相続放棄も選択肢として検討する必要があります(相続放棄についてはこちら)。
遺産はもれなく調査する必要があります(遺産調査についてはこちら)。

遺産分割の協議

相続人と遺産の範囲を確認した上で、遺産分割の協議を開始することになります。
話し合いを経ずに調停や審判を申し立てることも可能ですが、まずは共同相続人間で協議を行うケースが一般的です。相続人間で協議がまとまった場合は、誰がどの遺産をどのような割合で取得するのかを定めた遺産分割協議書を作成して、相続人全員で署名捺印をします。

遺産分割調停・審判

相続人間の裁判外での話し合いが難しい場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行うことになります。なお、調停を経ずに審判を申し立てることも法律上は可能ですが、実際は審判を申し立てたとしても、裁判所は事件を調停手続に付することがほとんどです。
申立先は、当事者間で特定の家庭裁判所を管轄裁判所とすることも可能ですが、合意がなければ、相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります(例えば、相続人ABCのうち、AがBとCを相手に調停を申し立てる場合、Bの住所地が神戸市であれば神戸家庭裁判所に申し立てることになります)。なお、審判申立の管轄は、被相続人の最後に住所にあるので、自己に有利な管轄裁判所において裁判手続きを進めるために、あえて調停申立よりも審判申立を先行させることもあります。

遺産分割の際によくある障害とその解決方法

そもそも相続人がわからない

相続人を確定させるためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得することからスタートし、被相続人の戸籍に載っている推定相続人の戸籍を収集していきます。戸籍には、附票といって、戸籍に載っている者の住所も紐付けられていますから、これによって相続人を確定させ、相続人らと連絡をとることが可能になります。

行方不明の相続人がいる

弁護士に依頼し、調査を尽くしたとしても相続人が所在不明の場合、裁判所を通じた手続が必要となります。具体的には不在者財産管理人選任の申立を行うことにより、裁判所に行方不明の者に代わって遺産分割を行ってくれる人を選任してもらいます。
また、行方不明の者が失踪宣告の要件を満たしている場合には、失踪宣告の申し立ても検討できます。失踪宣告とは、生死が7年不明な者等、一定の要件を満たす者について、法律上、亡くなったものと扱われます。行方不明者に相続人がいるか否か、失踪宣告の要件を満たすハードル等を検討し、失踪宣告の申し立てが依頼者にとって有利な場合には、失踪宣告を申し立てます。なお、失踪宣告の申立により、相続を巡る法律関係がより複雑になってしまう可能性もあるので、失踪宣告の申立ては慎重に検討した上で行うべきです。

相続人に認知症で遺産分割協議を行うことができない者がいる場合

相続人の中に認知症等を理由に意思能力を欠く方がいる場合は、問題です。意思能力とは、物事を判断したり、理解する能力のことを言いますから、意思能力を欠くものは遺産分割協議をすることができません。そして、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるものですから、これに対する手当が必要となります。
これについては家庭裁判所に対して当該意思能力を欠く者について後見開始の審判を申し立てることになります。成年後見人として親族である後見人が選任された場合には、さらに、特別代理人選任の申立という手続が必要となります。

なお、成年後見人の選任申立は、遺産分割協議が終われば効力を失うものではなく、認知症も回復するようなものではないですから、一度申し立てると基本的にはずっと後見人が面倒をみていくことになります。成年後見人の選任を申し立てる際には、遺産分割協議のみならず、当該成年被後見人の今後の生活全体を視野に入れて、誰を後見人として推薦するか等々を検討する必要があります。

相続人に未成年者がいる場合

相続人に未成年がいる場合、遺産分割協議は親権者が未成年者を代理して行うことになります。もっとも、未成年者と親権者とが同時に相続人になるようなケースでは、未成年者と親権者との間で利益相反が生じてしまいます(親権者と未成年者が同時に相続人の場合、未成年者の取り分が増えれば増えるほど親権者の取り分が減るという関係になるので、客観的には利益が相反しています)。
このような場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てて、その者が未成年者に代理にして遺産分割協議を行うことになります。
もっとも、特別代理人とは言っても親族等でもかまいませんし、特別代理人と親権者とで同一の弁護士に委任して、遺産分割協議を行っても多くの場合は問題ありません。

相続人の中に行方不明ではないが、連絡しても反応がない者がいる場合

行方不明とまでは言えないが、遺産分割に協力してくれない相続人がいるケースについて考えます。住所地には住んでいるようであるが、手紙を送っても反応がなくて困ったというようなケースは実務上、多くみられるところです。この場合、相続人は所在不明ではないから不在者財産管理人の制度は使えません。また、本人に遺産分割をする能力がないわけではないから成年後見人選任も使えません。

このようなケースへの対応としては、まずは、家庭裁判所に調停を申し立て、裁判所から当該相続人に連絡をとってもらい、遺産分割への関与を促しますが、それでも反応がない場合には、調停に代わる審判という手続きを利用することになります。調停に代わる審判とは、ごくおおまかにいうと、裁判所の考える合理的かつ具体的な解決案を当事者に示し、当事者らに異議がなければ当該解決案を確定させるという手続きです。この手続きによって、一部の相続人から反応がない場合でも、遺産分割を成立させることが可能になります。

その他

以上のほかに、実務においては、「相続人が外国にいて連絡がとれない」「相続人に刑務所に服役している者がいる」「相続人は海外の人と養子縁組をしていて、日本に戸籍がない」等々、様々な解決困難な事例のみられるところです。
当事務所は解決困難な事例においても依頼者様の正当な権利の実現のために全力を尽くします。

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