事実婚・LGBTパートナーの相続対策

事実婚・LGBTパートナーの相続対策

内縁や同性パートナーと相続をめぐる法律関係

婚姻の届出を欠くだけで、夫婦としての社会的実態のある男女には、事実婚(内縁)関係にあるとして、婚姻に関する様々な民法の規定が準用されてきました。たとえば、同居協力扶助義務(民法752条)、婚姻費用分担義務(760条)、離婚の際の財産分与義務(768条)等は、婚姻の届出をしていない事実婚状態の男女にも適用があります。
また、同性カップルのパートナーであっても、事実婚にある男女と異なる取扱をする合理的な理由はないと思われるので、上記のような取扱いは、同性カップルのパートナーにおいても適用される可能性があります。
しかしながら、戸籍による画一的処理が要請される相続権については、内縁や同性パートナーには認められていません。どれだけ精神的に強固な結びつきを有していて、戸籍上の夫婦とまったく遜色ない家族としての生活を営んでいたとしても、相続権は認められません。
したがって、事実婚や同性カップルの方にとっては、もしものことがあった場合のための事前の相続対策が非常に重要です。

パートナーシップ契約・遺言・信託の利用

相続対策として、パートナーシップ契約、遺言や信託の制度を用いて、死後の財産が誰に承継されるか決めておくという方法が考えられます。
もっとも、この場合には、一定の法定相続人から遺留分請求が認められてしまうことがあります。遺留分というのは、ごく簡単にいうと、遺産のうちの一定の範囲は、最低限の生活保障の趣旨で一定の範囲の法定相続人に保証されるというものです。たとえば、男性が同性パートナーの男性に、自分の財産をすべて承継させるという遺言を残して亡くなったとします。このとき、男性の親が存命であれば、親が遺留分権者になりますから、親は同性パートナーが取得する財産の金額のうち、一定の割合の金額を取得することになります。したがって、遺留分権者の存在が想定される場合には、遺留分侵害額請求権の行使を念頭に置いた準備が必要になります。

養子縁組の利用とその問題点

利用の可能性

特に同性パートナー間で婚姻の代替として利用される方法として、養子縁組をすることによって法律上の親子関係を創設し、相続権を発生させるという方法があります。この場合、同性パートナーも遺留分権者になりますから、同性パートナー以外に遺留分が発生する可能性を減らすことができるというメリットがあります。相続以外の面でも、養子は養親の氏を名乗ることになるので、カップルで同じ氏を名乗ることができたり、法律上の家族になるので、病院や役所での取扱いなど、社会的に家族として扱われることとなります。

養子縁組利用の問題点

のちに無効となるリスク

同性パートナーの養子縁組には、そもそもの有効性に疑義が生じかねないという大きなデメリットがあります。養子縁組の有効性について、最高裁昭和23年12月23日(民集2巻14号493頁)は、「たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があったとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、養子縁組は効力を生じない。」としています。判例の考え方からすると、婚姻と同様の効果を得たいという意思のもとで養子縁組を行う同姓カップルの養子縁組は無効と判断される可能性も相当程度あるものと考えます。このことからすると、同性パートナーとの間に親族関係を生じさせることを目的とする養子縁組は、のちに無効と判断される可能性もあると思われます。

将来的に性別取扱変更の許可を受けた場合に婚姻の障害となるリスク

将来的にパートナーの一方が家庭裁判所において性別取扱い変更の許可を受けた場合には戸籍上の異性となるので婚姻制度を利用できるのが原則ですが、すでに養子縁組をしてしまっている場合には、婚姻の障害となります(いったん養子縁組を行うと、単に離縁しても、婚姻はできません)。

将来同性婚が認められるようになった場合に婚姻の障害となるリスク

将来的に日本国においても同性婚が認められる可能性もはあります。その際に、すでに養子縁組を成立させてしまっている場合は、婚姻の障害となってしまう可能性もあります。
したがって、同性パートナーの相続対策として、養子縁組制度の利用を行うことはリスクが大きいと考えます。

特別縁故者の制度

もしも、事前の相続対策をなさないまま相続が発生してしまった場合には、特別縁故者の制度を利用できる可能性があります。
特別縁故者の制度は、亡くなられた方と生前に特別な関わりを有していた者に対して、裁判所の審判により、相続財産の全部または一部を与えることを認める制度のことです。この制度は、被相続人に相続人が存在しない場合のみ利用することができますので、有効な場面は限定的ですが、最後の手段として検討できます。

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