最新コラム・FAQ

離婚後の破産(支払者側の破産)

Q:Xは、Yと離婚して、財産分与や慰謝料、養育費、未払婚姻費用を支払ってもらう約束をしていたのですが、その直後、Yが破産してしまいました。Xは、Yの破産後も、Yから慰謝料などを支払ってもらえるのでしょうか。

A:①財産分与、慰謝料については、原則として、Yが破産すれば支払いを請求することができません。②これに対し、養育費、婚姻費用については、Yが破産しても支払いを請求することができます。

【解説】

1 相手が破産したらどうなるの?
破産手続が開始された場合、債権者は、破産者(債務者)の財産が十分にあれば、配当手続によって弁済を受けることができますが、破産者の財産が十分になければ、配当を受けることができません。
そして、破産手続開始前の原因に基づいて発生した債権については、基本的に支払う必要のないものになります(これを「免責」と言います。)。
ただし、一定の債権は、免責が認められず、破産者は、破産終了後も支払義務を負い続けることになります。財産分与や慰謝料を支払ってもらえるか否かは、この「免責」の対象になるか否かによって決まります。

2 財産分与や慰謝料は免責されるの?
財産分与請求権や慰謝料請求権は、免責の対象になると解されています。したがって、設例で言えば、Yは、破産すれば、財産分与金や慰謝料を支払う必要がなくなります。
これに対し、養育費や婚姻費用については、免責の対象になりませんので、Yは、破産後も、養育費や婚姻費用を支払う必要があります。これは、養育費や婚姻費用が、配偶者等の家族の生活にとって必要不可欠なものであることを理由に、破産法よって保護されているからです。

3 離婚相手が破産する直前に財産分与等の支払いを受けていた場合は?
(1)財産分与について
設例とは異なり、Xが、Yの破産直前に、Yから財産分与を受けていた場合は、その額が不相当か否かで結論が変わってきます。
財産分与額が相当の範囲内(通常は2分の1ずつ)であれば、Yの破産後も特段問題視されることはありません。
これに対し、財産分与額が不相当に過大であった場合には、Yの破産後、Xは、破産管財人と呼ばれる立場の者(簡単に言えば、Yの財産を管理・換価し、破産手続を進める立場の者です。)から、財産分与金の返還を求められる可能性があります。

(2)慰謝料について
慰謝料についても、離婚の慰謝料として相当な範囲内の額であれば、破産管財人から返還を求められる可能性は低いでしょう。
これに対し、離婚の慰謝料として不相当に過大な額である場合は、破産管財人から返還を求められる可能性があります。また、離婚の慰謝料ではなく、不貞行為に関する慰謝料の場合も、返還を求められる可能性があります。 

(3)養育費や婚姻費用
養育費や婚姻費用についても、相当な範囲内の額であれば、返還を求められる可能性は低いです。
ただし、養育費については、将来の分も含めた一括払いの場合には注意が必要です。養育費は、実際の監護によって日々発生するものであり、養育費の額も、監護の実施時点での必要性や収入状況等によって定めるのが本来です。そのため、将来の分も含めた一括払いの場合は、それが本来の養育費の性質を有すると言えるのかが問題となります。
この点は見解が分かれるところですが、養育費の一括払いとして支払われた場合には、特に一括払いが必要であるという特段の事情がない限り、養育費として相当な範囲を超えたものとして、破産管財人から返還を求められる可能性も十分にあります。

4 留意すべき点
離婚する際に相手の財産状態が悪化している場合は、できる限り早めに財産分与や慰謝料の支払いを受けておく方が望ましいです。ただし、財産分与や慰謝料の金額が不相当に過大な場合は、後に破産管財人から返還を求められる可能性もありますので、その点は注意が必要です。

(阪口亮)

法律相談のご予約・お問い合わせは
こちらからどうぞ

このページの先頭に戻る