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学校の管理下で生じた事故に関してどのような請求ができるか。

Q:私立小学校に通っている息子(10歳)が、学校の体育の授業中、友人に背中から押されて転倒し、大けがを負いました。治療費などを学校に請求することは可能なのでしょうか。

 

A:治療費などの損害を補填するために、日本スポーツ振興センターの災害共済給付金を受けることや、学校又は加害児童に対して損害賠償請求を行うことが考えられます。

 

【解説】

1 災害共済給付金

 学校事故が生じた場合の損害を補填する制度として、日本スポーツ振興センターが実施する災害共済給付制度があります。
 災害共済給付とは、学校の管理下における児童生徒の災害につき、学校設置者が児童生徒等の保護者の同意を得て、当該児童生徒について日本スポーツ振興センターとの間に締結する災害共済給付契約により給付される、一種の保険制度です(日本スポーツ振興センター法16条。給付金額については、同センターのホームページを参照。)。
 災害共済給付は、「学校の管理下」における災害であることが要件ですが、授業、学校行事、部活動、校外活動、休憩時間、放課後、通常の経路及び方法による登下校中など、対象範囲は非常に広く解されています。
 また、災害共済給付は、当事者の過失に関係なく給付されます(自殺は、原則として災害共済給付の対象ではありませんが、いじめ・体罰による自殺は対象になります。)。

2 学校・教師に対する請求

 私立学校は、保護者等と締結している在学契約に基づき、児童生徒の安全に配慮すべき義務を負っていると解されており、学校の管理下での事故について、一定の場合に損害賠償責任を負います。また、公立学校も、公法上の関係に基づき同様の義務を負うと考えられます。
 学校がいかなる範囲で法的責任を負うかについて、判例は、「学校の教育活動の一環であり、教育活動と密接に関連する活動」について法的責任を負うと解しています。もっとも、この判断基準は曖昧であるため、実際の事案においては、具体的な活動内容、時間、場所等を踏まえて判断されることになります。
 本設例では、体育の授業についてどのような指導がなされていたか、体育の授業中に教師がどの程度監督していたか、突発的に生じた事故なのか、などの諸事情を考慮して、学校の法的責任の有無が判断されることになります。例えば、当該生徒同士が体育中に鬼ごっこをし、教師もそれを認識していたのに、何も指導等をしていなかった場合は、学校側に責任が認められる可能性が高いです。
 なお、私立学校の場合は、教員個人に対しても、民法上の損害賠償請求を行うことが考えられます。

3 加害生徒に対する請求

 本設例のように加害児童が10歳であれば、当該行為によって自分に責任が生じることをきちんと理解せずに行動に出ることがあり、その場合は責任無能力を理由に民法上の損害賠償責任を負いません。
 しかし、加害児童が責任無能力の場合は、その監督義務者(通常は親権者)が損害賠償責任を負うことがあります(民法7141項本文)。
 監督義務者は、その直接的な監視下にない子の行動について、人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督すべき義務があると解されています。したがって、通常、人身に危険が及ぶような行為により第三者に損害を生じさせた場合は、原則として損害賠償責任を負うことになります(これに関し、子どもがサッカーゴールに向かって蹴ったボールが校庭から道路に転がり出て、これを避けようとした自動二輪車の運転者が転倒し、死亡した事案では、ゴールに向かってフリーキックの練習をすることは通常人身に危険が及ぶ行為ではないとして、親の責任を否定した判例があります。)。
 本設例では、友人の背中を押すという行為は、通常人身に危険が及ぶ行為ですので、加害児童の両親は、治療費等の損害賠償責任を負う可能性が高いといえます。

4 弁護士に相談すべき場合

 子どもが学校事故に遭った場合は、突然のことで動揺し、何をどうすればよいのか分からないことが通常だと思います。
 また、学校内の事故であるため、両親としては事実関係がよく分からず、学校側もきちんとした説明をしてくれないという場合もあると思います。
 そのような場合に弁護士に相談することで、今後どのように対応すればよいか、法的にどのような問題があるのか、などについて的確にアドバイスを受けることができますので、まずは話だけでも聞いてみることをお勧めします。

(弁護士 阪口 亮)