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2020年11月04日

離婚・不貞

退職金は財産分与の対象になるか

Q:結婚20年目を迎えますが、このたび、離婚をしようと考えています。夫は会社員なのですが、財産分与をするにあたって、退職金はどのように扱われますか?夫が退職金を受領するのは10年以上先なのですが、やはり妻が退職金をわけてもらうことは難しいでしょうか。

 

A:退職金を現実に受領する前であっても、退職金は財産分与の対象になる可能性が高いと考えます。

 

 

【解説】

1 はじめに
 終身雇用を基調とする日本においては、退職金はかなりの高額になることも多く、離婚の際に退職金を分けてもらえるのかどうかは離婚後の生活に大きな影響を与えます。実際に、「退職金を受領するまでは離婚を我慢している」などという相談者様の声もよく耳にするところです。それでは、退職金は受領前においては、財産分与を行うにあたって考慮できないものなのでしょうか。

2 退職金の財産分与対象性
 退職金は、賃金の後払い的な性格を有しておりますので、婚姻期間中に相当する部分の退職金については、財産分与の対象になるという考え方が一般的です。
 賃金の後払い的性格というのがどういうことかというと、退職金というのは、在職期間中の賃金を退職時に後払いするという性質を有するということです。そうすると、婚姻期間と在職期間がかぶっている部分についての退職金は、夫婦が共同して形成した財産とみることができますので、財産分与の対象になるということになります。

3 どのような退職金であれば財産分与の対象になるの?
 支給の蓋然性が高い退職金であれば、財産分与の対象になります。支給の蓋然性が高いかどうかは、勤務する会社の就業規則(賃金規程)を確認することになりますが、就業規則上、退職金が支払われることが明らかであれば、財産分与の対象とすることができるでしょう。

4 10年以上先に支給される退職金でも財産分与の対象になるの?
 支給までの期間が長い場合には支給の蓋然性が低いとして、退職金は財産分与の対象にはならないという考え方もありえます。しかしながら、実務的には、支給が相当先であっても、婚姻期間に相当する退職金は財産分与の対象になるという考え方の方が一般的です。

5 財産分与の対象になる金額はどのように計算するの?
 それでは、現実に受領する前であるのにもかかわらず、財産分与にあたって、どのような方法で金額を算定するのでしょうか。この点についてはいろんな考え方があるところですが、一般的にいえば次のとおりになります。
 まず、財産分与の基準となる時点(多くの場合、別居時点)において、自己都合で退職した場合の金額が算定できる場合は、同金額に、在職期間中、婚姻関係にあった期間の割合をかけあわせて算出します。たとえば、1990年から勤務を開始、2000年に婚姻し、2018年に別居した場合で、2018年に自己都合退職した場合の退職金が300万円だとすると、

 300万円×18(婚姻期間)÷28(在職期間)≒193万円

が財産分与の対象となる退職金と算定されます。
 他方で、会社の退職金規定上、別居時点の退職金の金額が算定できず、将来の退職時点の退職金の金額しか算定できない場合は、退職金の金額のうち、婚姻期間に相当する金額から、中間利息を控除(簡単にいうと、将来もらえるお金を現在の価値に引き直すようなイメージです)した金額を財産分与の対象とする、という考え方が一般的ではないかと思われます。

5 退職金の金額をどうやって知ればいいの?
 相手方が任意に勤務先の就業規則等を入手し、開示してくれればよいですが、協力的でない場合にはどうすればよいでしょう。そういった場合には、離婚調停の中で、「調査嘱託」の申し立てを行うなどして、調べることとなります。弁護士にご相談下さい。



(弁護士 池本直記)