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2021年12月08日

企業法務全般

社債の利息に過払金は発生するか

Q:利息制限法1条所定の制限利率を超えて支払われた社債の利息について、いわゆる過払金であることを理由に返還を求めることはできるのでしょうか。

A: 特段の事情がない限り、社債には利息制限法の適用はないため、過払金の返還を求めることはできません。

【解説】

1 社債と利息制限法の概要
 「社債」は、会社法の規定により会社が行う割当てにより発生する金銭債権であって、会社法676条各号に掲げる事項(募集事項)についての定めに従い償還されるものと定義されています。社債には担保の付いたものや、株式と関連付けた新株予約権付社債など、様々な種類のものが存在します。このような社債は、今日、債務による資金調達手段として広く用いられているところです。
 他方で、利息制限法1条は、「金銭を目的とする消費貸借」における利息の契約について、その利息が一定の利率を超える場合には、その超過部分について無効とすると定めています。この利息制限法1条が一般の貸金だけでなく、会社法上の社債にも適用されると解した場合、社債の利率が利息制限法所定の利率を超えているときには、いわゆる過払金が発生することになります。
 そこで、社債にも当然に利息制限法1条が適用されるか否かが従前から議論されていました。

2 最高裁の判例
 上記の論点について、令和3126日、最高裁判所は、特段の事情がある場合を除いて、社債には利息制限法1条の規定は適用されないとの解釈を示しました。
 最高裁がこのような解釈を示した理由としては、①社債と一般の金銭消費貸借が異なること、②利息制限法の趣旨が社債には直ちに当てはまるものではないこと、そして③今日、様々な商品設計の下に多種多様な社債が発行され、会社の資金調達に重要な役割を果たしていること、の3つが挙げられています。
 ただし、社債であれば一律に利息制限法の適用がないというわけではなく、「特段の事情」がある場合には、利息制限法が適用される余地もあります。最高裁は、「特段の事情」の例として、「債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し、社債の発行に仮託して、不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど、社債の発行の目的、会社法676条各号に掲げる事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められる」場合を示しています。これは、貸金業者が社債に名を借りて高利を得ようとすることなどを防止するために示したものと思われます。

3 資金調達手段としての社債の重要性
 社債は、株式発行のように経営権に影響を受けることがなく、銀行融資のように銀行からの審査や担保の要求等もされずに、会社が主体的に契約条件を定めて発行することができる資金調達手段であり、特に中小企業の資金調達手段としては近年その重要性が増してきているとされています。このような状況において、利息制限法が社債にも適用されることになれば、社債の重要な機能を阻害する事態にもなりかねませんが、上記の最高裁の判例を踏まえれば、特段の事情のない限り、利息制限法が適用されることはないということになります。
 社債と利息制限法の適用の有無が問題となるケースは多くないと思いますが、会社が社債を発行する上で知っておくべき近時の判例として紹介する次第です。


以上