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2021年12月08日

相続・遺言

具体的相続分の主張に期間制限はないか

Q:父が亡くなってから10年が経過しようとしていますが、未だに遺産分割を行っていません。父は生前に兄や妹に多額の贈与をしていたと聞いたことがありますが、私が遺産分割でそのことを主張することはできるのでしょうか。

A: 具体的相続分の算定にあたり、被相続人からの生前贈与分を特別受益として主張することができます。ただし、相続開始から10年が経過した場合には主張できない可能性があるため注意が必要です。

 

【解説】

1 具体的相続分の算定の困難さ
 具体的相続分を算定するには、まず遺産に属する財産の範囲を確定し、その財産の価額を評価する必要があります。その上で、遺贈や特別受益、寄与分の有無を確定し、その価額を評価して、具体的相続分を算出することになります。
 その際、遺産の範囲や評価、特別受益や寄与分の有無・評価等の調査が困難であったり、相続人間で争いが生じるといったケースは多く、具体的相続分の算定を難しくする要因となっています。特に相続開始から長期間が経過している場合には、証拠の散逸、人の記憶の減退等により、なおさら具体的相続分の算定が困難となります。

2 具体的相続分の期間制限(改正法)
(1)10年の期間制限
 以上のような具体的相続分の算定の難しさを克服するために、令和3年に民法改正がなされ、相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割には、特別受益及び寄与分の各規定を適用しないこととされました。この遺産分割に関する改正は、令和5年4月1日に施行されます。
 なお、このような具体的相続分の期間制限は、改正法の施行日前に相続が開始した遺産分割についてもさかのぼって適用されますので、既に相続が開始している事案についても注意が必要です。

(2)2つの例外
 もっとも、次の①または②のいずれかに該当する場合には、相続開始時から10年を経過した後であっても、特別受益及び寄与分の各規定の適用を受けることができます。

①相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき
②相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6か月以内の間に、遺産分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に、その相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき

 「やむを得ない事由」とは、例えば、被相続人の生死が不明の状態であり、被相続人が死亡したことをおよそ知ることができない状況にあった場合や、相続開始から10年を経過する直前に遺産分割調停等の申立てが取り下げられた場合などが想定されています。客観的な事情からして、相続人において遺産分割の申立てを行うことを期待することがおよそできない場合をいうと考えられていますので、基本的には安易に例外が認められることはないと思われます。

3 期間制限による影響
 相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割においては、原則として、特別受益と寄与分の各規定が適用されないことになります。
 したがって、生前贈与や寄与分が存在したとしても、それを考慮した具体的相続分による分割を主張することができなくなります。その結果、相続開始から10年を経過した後は、相続人は、各相続人の法定相続分(指定相続分がある場合にあっては、指定相続分)を前提に遺産分割を行うことになります。
 標記の事例では、他の相続人が生前贈与を受けていたことは、具体的相続分の算定の際に特別受益として主張することができますが、相続開始時から10年が経過してしまうと、具体的相続分を主張することができなくなり、不利益を受けることになります。そのため、相談者としては、相続開始時から10年を経過するまでに遺産分割調停を申し立てる必要があります。

以上